本気で妖怪になろうとする男を追い続けた映画『加藤くんからのメッセージ』監督・主演インタビュー【後編】

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映画『加藤くんからのメッセージ』公開を記念した、ロングインタビュー後編。
>>インタビュー前編はコチラ

後編では本作の内容や、加藤さん、綿毛監督が作品を通して伝えたい想いについて迫っていく。
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加藤さんは“何も持たざる者”なんです

加藤さんは、父に手紙を読み、自分が妖怪になりたいことを打ち明ける (C)綿毛

加藤さんは、父に手紙を読み、自分が妖怪になりたいことを打ち明ける (C)綿毛


—加藤さんの人間臭いところは本編でも魅力的に描かれていますよね。

綿毛:そうですね。ただ、あくまで私が加藤さんを撮り始めたのは人間的な魅力を感じたからではなく、ひとつの作品を撮りたいという単純な気持ちからです。不思議なんですが、加藤さんって入学当初の状況に比べて、今の学生たちからはとても支持されています。世代によってこんなにも違うのか、と感じることがあります。

加藤:入学当時の友人とは今でも仲が良く、僕の妖怪活動を応援してくれてはいますが、あくまで僕を面白がっているだけで、基本的に妖怪とか全く信じてないですね。でも、若い世代の友人たちは妖怪活動そのものに興味を抱いてくれる。本当に妖怪になれるかどうかは分からないが、可能性を感じると言ってくれるんです。

綿毛:私のなかでの加藤さんは、最初に出会った時の“怒られてショボンとしている”イメージと変わらないから、慕われていること自体に驚いています。

加藤:大学の卒業前日に改めて自覚したんですけど、客観的に見て僕は社会において完璧なダメ人間なんです。今までずっと失敗続きで、様々な人に迷惑かけてきました。だから、僕一人で自分の夢を叶えることは出来ないかもしれない。その代り、他の人もそれぞれ夢があると思うので、僕から率先して応援していくことで、互いの夢を叶えていけるのではないかと考えたんです。

—確かに妖怪活動の最中、加藤さんは何度も「どんな夢でも叶う!」と叫び続けています。鬱屈としたものを抱えるほどに、人を応援しようとしていますよね。

加藤:人から恋愛や将来の相談を受ける度に、やり切れない気持ちになりますよね。だからこそ、互いに応援し合おうという気持ちで、大きな変化をもたらしたいんです。このインタビューや映画を観て面白いと感じた人は、僕に連絡を下さい。僕の妖怪活動の事を理解してもらえなくても良いから、一緒に面白いことを企てながら、夢を叶えていきましょう。僕へはTwitterかFacebookに連絡を入れてくれれば繋がります。あとは吉祥寺界隈でウロウロしているので、そこで捕まえてくれれば大丈夫です。本編中でも論破されまくっていますが、僕は「夢=叶う」だと信じています。僕自身はそれを証明するためにも、たとえ不可能だと言われようと妖怪になろうと思います。

加藤さんは妖怪活動の一環として絵本の執筆も行い、すでに3冊出版している (C)綿毛

加藤さんは妖怪活動の一環として絵本の執筆も行い、すでに3冊出版している (C)綿毛


—綿毛さんは、加藤さんの活動をどう考えていますか?

綿毛:妖怪活動は今でもたまに撮影していますが、もう加藤さんはいいかな、って少し思っています。加藤さんは妖怪活動の一環として絵本を描いていて、撮影時点では7年くらい何度も描き直して、ようやく出版が決まった!という状況でした。その時の加藤さんは本当に“何も持たざる者”でしたが、今の加藤さんは絵本作家として活躍しています。なので追いかけるのはもういいのかなと思います。

加藤:そうだね。結局、病院事務を辞めて今は絵本屋さんでバイト中だから、お金は相変わらず無い。ただ、絵本は夢と現実との境を無くしたい僕にとって、すごくリンクしていると思っています。

綿毛:だから、今の加藤さんを撮る意思はそこまでないですが、加藤さんを追いかけていたいとは考えているので、自然の流れでもう一作撮るかもしれないですね。
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それぞれにとっての、思い出深いシーンについて

ハチ公前で妖怪演説をする加藤さん (C)綿毛

ハチ公前で妖怪演説をする加藤さん (C)綿毛


—お二人が本作で特に気に入っている、思い出深いシーンはどこですか?

加藤:僕は井の頭公園にいる象の“はな子”と会話するシーンと、父に「妖怪になりたい」と打ち明けたシーン、そして渋谷での演説シーンかな。

綿毛:渋谷の演説は、就職活動中と思われる学生たちが、演説中の加藤さんを見てバカにしたように笑っていたんですよね。私、すごい腹立たしくなって、加藤さんに「笑われましたよ!」って伝えたんです。そしたら加藤さんは笑いながら「いいんです、それで」って言いましたよね。

加藤:妖怪ってやっぱり、基本は笑われる存在なんですね。バカにした笑いも含めて、心に何かが引っ掛かったから笑ってくれたんだと思います。だから、どんな笑われ方をしようとも、それが妖怪なんですよ。僕は今までずっと相手にされずに生きてきましたから。路上で「僕は妖怪になるー!」って叫んだところで、「加藤がやばくなった」と言って誰からも相手にされませんでした。今、このように相手にしてくれる人達がいるのが不思議なくらい。

綿毛監督にとっても思い入れのあるホウキのシーン (c)綿毛

綿毛監督にとっても思い入れのあるホウキのシーン (c)綿毛


綿毛:私の思い出深いシーンは2つあって、ひとつは先述の通り、早稲田大学のベンチで加藤さんが自分語りをしているシーンです。入学当初を振り返る加藤さんの顔がとても印象深かったです。もうひとつは加藤さんがホウキで空を飛ぼうとするシーンです。最初は住宅街の坂で飛んでもらったんですが、加藤さんが転んだんです。腕を痛そうに抱えていたのですが、その後も場所を変えて何度か空を飛んでもらったんです。最後は吉祥寺の居酒屋でお疲れ、とお酒を飲んで。翌日、加藤さんから腕にヒビが入っていたと連絡がありました。住宅街で転んだ段階ですでに骨折していたんです。にも関わらず何度もリクエストに応えてくれて、打ち上げにも参加してくれた。

加藤:あれはねぇ、全治一か月でギブスまで付けて、めちゃくちゃ痛かったですね。初めての骨折で、危うく複雑骨折になるところだった。それでも、「ホウキで空を飛ぶなんて無理だ」という世間一般の考えに対して、僕は挑戦したかった。到底出来ないと思われていること、挑戦するだけ無駄だと言われていることも、実際やってみることが大切だと思ったんです。

綿毛:本編の冒頭では、腐った蓮の花を背景にしながら、ホウキ片手に「どんな人の夢も叶う!」って加藤さんが叫んでいますが、すでに骨折しています。加藤さんの優しさですよね。
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加藤さんと、綿毛監督が伝えたいこと
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—最後に、劇場公開を楽しみにしている方々に、メッセージをお願いします。

綿毛:もし自分の殻に閉じ籠っている人がいたら、散々悩みながらも行動し続ける加藤さんを見て、何かを感じ取ってもらえたらと思います。いずれはパッケージ化もして、少しでも多くの人に観て欲しいです。また、完全な未経験者だった私が、iPhoneやハンディカメラを使って、作品を完成させることができました。“伝えたい”という強い気持ちがあれば誰も作品は完成させられます。映像畑ではない人にも、「大丈夫、出来るよ」って言ってあげたいです。

加藤:僕として伝えたいことはあるけれど、作品を通してその人なりの見方を持ってくれたらと思います。たとえそれが否定的な意見でも嬉しいです。とにかく一度観てほしいです。
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冒頭でも評した通り、加藤さんは人間を超越した妖怪になろうとし続けているにも関わらず、作品は彼の“人間臭さ”で溢れ返っている。加藤さんはなぜ“人間臭い”のか。何度挫けて逃げようとも、どれだけ時間がかかろうとも、自らが決断した人生のターニングポイントに戻ってきて、再挑戦する勇気を持っているからではないだろうか。綿毛監督の言う“何も持たざる者”だからこそ、加藤さんは勇気を手にすることが出来たのだ。そして綿毛監督が彼の人間性に気付き、カメラを向け続けたからこそ、多くの人々の心を揺さぶる作品として実を結んだのである。観終わると自分も何かに挑戦したくなる、そう思わせてくれる映画だ。
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映画『加藤くんからのメッセージ』


2014年12月6日(土)より、渋谷・シアター・イメージフォーラムにてレイトショー、ほか全国順次公開
夢を必死に追いかけるも挫折した男・加藤志 異(36歳・独身)が、“人の夢を応援する”妖怪になることを目指し、がむしゃらに突き進む姿を追った、人間応援ドキュメンタリー。
『加藤くんからのメッセージ』公式サイト





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