【インタビュー前編】サウナで執筆を続けるマンガ家、タナカカツキ

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様々な人物から、活動の中心にある中2的思想を導き出す連載、「私の中2ゴコロ」。第1弾はマンガ家として活躍するタナカカツキさん。普段、仕事の殆どをサウナで行うという本人に、その真意や自身の中学校時代などを2回に分けて語ってもらいました。
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【前編】タナカカツキはなぜサウナで漫画を執筆するのか?

photo:Masanori Ikeda(YUKAI)

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–年間300日以上はサウナで仕事をしています

僕が最初にサウナに目覚めたのは今から5~6年前になりますね。今では年間300日以上は行っています。中には、行くだけ行ってサウナに入らない日もありますよ。ほぼ毎日、昼くらいから夕ごはん時くらいまで居て、何かしら作業を終えて帰宅するのが日課なんですよね。

サウナって実は今むちゃくちゃ進化してて、ワーキングスペースやwi-fi、電源が完備されてるところが増えているんですよ。施設も大きいですし、喫茶店に比べサウナにまで入れちゃうわけですから、平日の昼間は背広を着た大人の方でいっぱいですよ。

それで仕事仲間とも現地で落ち合って、その日の作業を進めて行くわけですが、店舗にも様々な個性があるんですよね。だからタスク毎に店舗を使い分けていますね。例えば、アイディアを練る時ならサウナさえあれば問題無いですが、実作業をする時はパーテーションなどもあるワーキングスペースの充実した施設、会議がメインの時はそれに適したサイズの施設、といった感じで1日何軒もはしごしていることは多々あります。
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–僕は日本を代表するサウナ大使

何しろ僕、「サウナ大使」なんですよね。だから日本中のサウナ(サウナ協会の加盟店)無料で入り放題なんですよ。サウナが好き過ぎて『サ道』という漫画を執筆したんですが、それを期に日本サウナ・スパ協会から任命してもらえたんです。実際『サ道』もサウナで執筆しましたし、その後も3冊くらい完全にサウナだけで描き終えた漫画があります。

日本では僕の他にもう一人だけ大使がいまして、それが実は長嶋茂雄さんなんですよね。サウナ界においてはONならぬTNな訳です。……まぁあの人はもう日本中のあらゆる物事が無料でいいんじゃないかと思っちゃいますけど。

それで、この無料パスをさっと差し出せば、僕はどこでも好きなだけサウナに入れる訳です。ただ中にはバイトくんが無料パスの意味を知らされてなかったりして戸惑うこともあるんですよね。そうすると支配人待ちになったりして、無性に恥ずかしい瞬間もありますね。面倒臭い状況の時は、支払ってでも入ってます。
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–サウナって文字を見ただけで興奮するんです

5~6年前サウナに目覚めた当初は、純粋に僕の中で革命が起きた感じだったんですよ。それまではオジサンが行くところだと思って、何だったら水風呂含めてスペースの無駄ぐらいに思っていて、食わず嫌いなまま遠ざかっていた場所だったんですよね。

ある日近所のスポーツジムでたまたま入って、こんなに快楽を得られるものなのか!と(笑)何しろ血行を急速に良くする訳ですよね、頭が冴えまくります。僕はそれをニルヴァーナ状態だと思っているんですが、もはや古来から伝わる合法ドラックですよ。今では大分落ち着きましたが、サウナという文字を見ただけでも興奮してしまうくらい、忘れられない依存性みたいなものがあるんですよね。

それで自分の限界がどれ位か知りたくて、中にいる時間を長くしてみたり、水風呂との往復を繰り返したりしたこともありまして、結果2度ほど倒れてしまったこともあります。血流で遊び過ぎたんでしょうかね、通い過ぎて病院にかかってしまったこともあります。そういったのを乗り越えて、自分とサウナとの距離を保ちながら今でも毎日通っていますね。
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タナカカツキ5
–サウナは人をクリエイティブな状態にする

よくサウナとお風呂を一緒に考える人がいるんですけど、全く逆と言ってもいい存在だと思うんですよね。湯船は寝る前に浸かって、睡眠を促進させるものなんですよ。だからお風呂に入った後に活動を続けていると疲れますよね。あれは湯船に浸かったことで、既に体が疲労しているんですね。お風呂は睡眠とセット。睡眠をすることによって披露回復に繋がるんです。サウナは水風呂とセット。入ることで血行が良くなって活発になるんですよ。だからアイディアを練ったりするのにサウナに入るのは、実はとても合理的なんですよね。

たまに漫画家同士の懇親会なんかで他の作家さんにアイディアをどういった場所で練り出しているのか聞くんですが、皆さん散歩されているみたいなんですよ。恐らく、気分転換と同様に血行が良くなることが作用しているんだと思うんですけど、考え事しながら散歩するのは危険がいっぱいですよね。サウナは室内ですから、安全地帯な訳ですよ。僕自身はこれまで何度も、煮詰まった状況をサウナで乗り越えてきましたから、これからも変わらずサウナで制作活動を続けていきたいと思いますね。
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タナカカツキ-3
–理想のサウナは存在しない

「自宅にサウナが欲しいか?」と聞かれたら、それは少し違うかな。サウナは昔から社交場なんですよ。国民の4人に1人が自宅でサウナを所有していると言われる、本場フィンランドでもそれは同じです。日本で言ったら和室の扱いで、生活に入り込んでいるわけですよね。だからこそ、フィンランド人のように湖畔で湖の引き立て役としてサウナを置き、皆でそこに集う文化まで演出出来なければ、サウナだけ自宅にあっても片手落ちかもしれないですね。

また、よく人から「自身にとって理想のサウナは何ですか?」と質問されるんですけどね、はっきり言ってこれだ!というのは無いですよ。と言うのも、場所ごとに異なる設備やローカルルールがありますから、それを楽しみたいんですよね。それに、サウナにいる時間ってニルヴァーナ状態じゃないですか。快楽の真っ最中では、良い印象ばかりが残るんですよね。中毒性も高いですから、外の世界とサウナ、どちらが日常なのか判別つかない事も多々ありますね。そんな時は外の世界に戻る意味もあまりないんじゃないか、なんて考えながら僕はマンガを描いています。
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次回後編では「タナカカツキ、中学2年生時代を語る」をお届けします。お楽しみに!
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タナカカツキ / マンガ家
1966年大阪うまれ。1985年マンガ家デビュー。著書には『オッス!トン子ちゃん』『サ道』、天久聖一との共著「バカドリル」などがある。4月21日に、伊藤 ガビンとの共著『大うんこ展』が発売開始。
タナカカツキ公式サイト




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